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「ゆふいん薪文楽」

ポスター写真

2000年5月26,27日
第10回目の「ゆふいん薪文楽」があります。
毎年、人間国宝の吉田蓑助さんを中心とした公演です。
湯布院にある一美術館の館長さんが個人的に主催している催し物です。

文楽人形

例年だと一晩公演ですが、今年は湯布院美術館主催としては最後ということで二晩公演、しかも出し物は「曽根崎心中」のみ。

通は同じ出し物とはいえ、二番通せば又違った趣があるといって両方を見る人も多いようです。

会場は美術館の庭で行われます。
雨の日は臨時の天幕を張って見ました。
お芝居の演舞場は床で屋ね付ですが見る側がお庭になるわけです。
もちろんそんなに広くはありませんので、観客の数は限られています。
100人といったところでしょうか。

ということは、劇場で見るより遥かに近くで見られるわけです。

お芝居が始まると、人形があたかも生きているかのように、見事にその場を支配していきます。
生命を吹き込まれるとはこのことでしょうか。

そのお話を語る浄瑠璃も並大抵のものではありません。
その声の響きは長年鍛え上げたものでしかあらわせない見事としか言いようのないものです。

文楽の人形遣いは黒子です、衣装は頭からしたまで真っ黒の衣装です。
顔も覆って見せません。

でも蓑助さんは違います。
紋付袴で顔も隠しません。
そして人形の動きというか、いや動かなくても輝いています。人形の眼の先手の先の空気が震えます。
普通顔の動きとか手の動きといったそのものの動きを凄いといいますが名人といわれる人は その範囲を超えたところで演技をしています。

人形遣いによって表現される何気ない動作のその先にある空間を取りこんでしまう、とんでもない世界です。

バレリーナによる空間支配は、その人そのものから出てくるものだから分からないでもありませんが、 人形というものを介しての空間支配なので凄いと思います。

西野流呼吸法の稽古をしていると、そのこと自体は不思議とは思いませんが、 でもそういう気を出すことはやはり並大抵ではありません。

どう凄いかなんて言葉では言い表せませんが、凄いから機会があれば是非生で直接見て下さい。

TVを通してではそのオーラは見えないようです。

湯布院の文楽公演は、来年からは公的機関の主催にしてほかの会場で続けられる予定です。

今回の出し物紹介
人間国宝 吉田蓑助 出演

ゆふいん薪文楽

近松門左衛門作/野沢松之輔脚色・作曲
曽根崎心中
生玉社前の段/天満屋の段/天神森の段

出  演

大  夫
豊竹嶋大夫
竹本千歳大夫・豊竹呂勢大夫・豊竹睦大夫

三 味 線
鶴沢燕二郎・野沢喜一朗・鶴沢清志郎

人  形
吉田蓑助(人間国宝)
吉田蓑太郎・吉田清之助・吉田蓑二郎・吉田勘弥
吉田勘緑・吉田清五郎・吉田蓑一郎・吉田勘市
桐竹紋若・桐竹紋秀・吉田玉勢・吉田蓑紫郎・吉田蓑次

鳴  物
望月太明蔵社中

時:2000年5月26日(金)、27日(土)
午後6時開場/7時開演[雨天決行]

ところ:由布院美術館 野外劇場

入場料:指定席S(さじき又はイス) 前売 8,000円
指定席A(イス) 前売 7,000円
自由席(イス) 前売 5,500円
(当日は各500円増)

申し込み方法
お電話、FAX、又はE-mailにて、入場券のご予約を受け付けています。

申し込み先
由布院美術館
〒879-5102
大分県大分郡湯布院町川上岩室
TEL:0977-85-3525
FAX:0977-84-5351
E-mail:yufuin@fat.coara.or.jp

人間国宝の至芸を堪能

「第10回ゆふいん薪文楽」が26日、湯布院町の由布院美術館野外劇場で始まった。
27日まで。 初夏の恒例行事として定着してきた同公演は今回で最後。
あいにくの雨にもかかわらず、町内外から約350人の文楽ファンが訪れ、伝統の芸を堪能した。
昨年,体調を崩し出演できなかった人間国宝の吉田蓑助さんが"復帰"。一番弟子の吉田蓑太郎さんら約20人が出演した。
お初と徳兵衛の悲恋物語を描いた近松門左衛門の代表作「曽根崎心中」を上演。独特の義太夫節や三味線の音色が、人形浄瑠璃の幻想的な世界を演出した。
観衆は、生きている人間のように動く人形遣いにほれぼれ。お初と徳兵衛の情念の世界に引き込まれた。
公演終了後、「ゆふいん薪文楽」に第1回から9回出演した蓑助さんや、主催してきた高橋鴿子同美術館館長に盛大な拍手を送った。
27日は午後7時から。

翌27日はあいにくの雨も上がりいい公演を見られたことと思います。
同日には大分市で谷村新司の公演もありました、夜は一緒になったのかな。
今の蓑助さんの奥さんは谷村新司のお姉さんです。
ちなみに、前の奥さんはイーデス・ハンソンさんでした。

湯布院町の名物行事となっていた由布院美術館(高橋鴿子館長)での「薪文楽」が今年限りの公演で千秋楽打ち止めとなった。 
ちょうど10年。
残念なこと、この上ない。
惜しみても余りある大分県きっての伝統芸能の祭典だった。
九州一円や山口、広島、からも客が来た「由布院薪文楽」が中止になった最大の理由は財政難だろう。 
歌舞伎と並んで海外でも最も有名な日本の伝統芸能である文楽が、大分県で毎年上演されたという驚異的な事業は、すべて高橋さんの個人的な財政に負ってきた。
にぎにぎしく全国文化祭まで開き「文化県」を標ぼうした県にとって、恥ずかしい話しではないか。
文楽という伝統芸能の価値が分からず、財政難で個人を追い詰め、ついにこれを中止させるというのでは「文化県」が泣こうというもの。
有名人のイベントであれば金を出す。
それだけが県の文化度ではあるまい。
不思議なことに県の全国文化祭にも文楽は入っていなかった。
県幹部にとっては「自分が理解できないものは文化ではない」ということなのだろうか。
かく言う我々だって、高橋さんのように人形浄瑠璃が分かるわけではない。
しかし何回も見ているうちに、人間世界の情念が人形に乗り移って、本当に人形の目から涙がこぼれているように見えてくるから、芸術の世界は不思議である。
今年も常連の吉田蓑助さん(人間国宝)や弟子の吉田蓑太郎さんらが来て、近松門左衛門の名作「曽根崎心中」を演じた。  嫋々とした浄瑠璃「この世も名残夜も名残、死にに行く身をたとふれば」という名場面は蓑助さん一代の人形遣い。
湯布院の夜を泣かせた。
それはまた「文化大分への別離」の涙でもあったろう。

あとがき
金曜日、雨の中で行われた文楽の公演は素晴らしいものであったらしい。
しかし主催者の高橋さんは来てくれた人に申し訳ないと入場料を払い戻すとのこと。
まともに行われても、ン百万円の赤字の出る由布院文楽公演、今回はどれほどの出費になることやら。