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ミニダンス情報誌「ウイング」/(株)ひまわり発行
面白い記事がありましたので転載します。

ダンスと中国拳法の不思議な一致
“芸”とはバランスのこと?
「二人の格闘家の出会い」 ルカ VS 高木

今号でご紹介した「太気拳」の第一人者、高木康嗣氏と現世界チャンピオン、ルカ・バリッキの対談が実現した。
武道とダンスという、全く違ったスポーツに、当社での動きを交えた対談、その後食事をしながらの和気あいあいの対談を通じて、 二人は初対面にもかかわらずムーブメント・センター・トレーニング等の話題で盛り上がり意気統合し、 お互いのビデオを交換し対談を終えた。

*     *     *  

ルカ
太気拳を初めて見せていただきました。ダンスにも言えることですが、留まることを知らない、 水が流れるような動きをするのですね。  
高木  
そうですね。目指すものは水の動きです。ですから構える時も攻撃する時も肘から先は常に脱力しています。
拳を打つ瞬間ですら完全には日本人はノコギリを引く時に使う内側の筋肉が発達しているので指導するのが大変なんです。
ルカ
ダンスの時も肘から先はフリーです。特に右手はパートナーの背中に触れているだけです。手のひらで支えたのでは 水の流れるような動きができませんからね。その動きの為の秘訣みたいなものはありますか?
高木
とても『スロー』な動きの練習をしています。
ロレイン
太極拳のように?  
高木
そうですね。また『這い』といってもっとゆっくりの、外見からは動いているのかいないのか分からないほどの スピードで行う練習もあるんです。
また太気拳は肘や腰・背中など身体の中心から力を出して、手足をロープ(鞭)のように使うんです、 この身体の中心部を器用に動かせるようにするために『立禅』という脳と神経をつなぐトレーニングを毎日行います。
大木を抱える格好で立って行う禅で、これは同時に自分の『中心を求める』作業でもあるのです。
ルカ
身体の中心はダンスにおいてもとても大切です。自分の中心、パートナーの中心、そして2人の間に作る調和の とれた中心。いいダンスが踊れたと感じるのは、それらが得られた時です。
その大切な中心の維持やエネルギーの充実のために武道に大変興味を持っています。
私はロンドンで『レイキ』を学んでいます。それによってエネルギーを宇宙からとり入れ、 それをいかに効率よく使うかを学んでいます。
ブラックプールのような大きな競技会では、 6ラウンドを初回から全力で踊り続けなければなりません。
そのときに 一番大切なことはエネルギーのコントロールです。もちろんどの競技会でも勝たねばならないし、相手に対して プレッシャーを与えなければならないので最初から手を抜くことはできませんが・・・。
また初回から全力を出すと言うことは自分達の気力の充実を確信するためにとても大切なことです。
自分達はできるのだと確信する気力の充実と精神力がエネルギーを生み出し、成功に導く。
"Energy follows thoughts."――エネルギーは思考に従う。
この言葉を大事にしています。
高木
実は日常の動きすべてを練習にしてしまう面白い練習法があります。顔を洗う時に、手を動かさず、顔の方を動かすようにする。
歯を磨く時にも同様に口の方を動かして磨くようにする。
風呂で身体を洗うときも身体の方を動かして洗うようにする。等がおすすめですね。  
ルカ  
そのトレーニングはおもしろいですね。今日からやってみます。  
高木  
そうですか。今日は長い間ありがとうございました。大変楽しかったです。

太気拳の紹介エッセイ/著者・高木康嗣

●空中を人が飛んだ!?
私の拳法の師であり、太気拳の創始者である澤井健一先生が75歳の時の出来事です。先生は麻雀をやっていたのですが、 あるとき向かいの人がイカサマをやっていることに気がつきました。先生は、瞬間的に怒りから手が出てしまい、 イカサマをした男の手首を握ってグイッと引っ張った次の瞬間、その男は唖然とした顔で、先生の座っていた長椅子の 隣にきちんと座っていたというのです。

 当の先生も一瞬、なぜ向かいに座っていたはずの男が、自分の隣に座っているのか理解できなかったそうです。 おそらく手を引っ張られたその男はお互いを挟んでいる麻雀卓を飛び越えて、隣に座ることになったのでしょう。 「わしもあれにはびっくりした。ああいうときは凄い力が出るもんだ」と、先生が話されていたのがとても印象的でした。

●70歳になっても、衰えない身体をつくる法
まるで「漫画の世界」のような出来事が可能になったのも、じつは理由があります。というのも、太気拳がダンスと同じように 「バランスと体重移動」をとても重視しているからです。
太気拳では、まずバランスをとるために「立禅(りつぜん)」といって樹木の生い茂った自然の中で立ち続けることから始まります。 自分自身が大木になったつもりで、リラックスしてバランス(中心に立つ意識)をとり続けます。これを毎日15分ほど繰り返す うちに自然と自分の中心が分かるようになり、立ち姿が美しくなっていきます。
そして「揺り(ゆり)」から「這い(はい)」へと体重移動(重心移動)のためのトレーニングが、 ゆっくりと系統的に行われます。
このような練習で身体を巡る神経の働きを活発にし、精神の安定を図り、常にバランスのとれた健康体を作り上げ、 いくつになってもリラックスした身体の自然な動きができるようになります。さらにいざというときには、 目にも止まらぬ速さで驚くべきパワーが発揮できるというわけです。
私は70歳を過ぎた澤井先生の動きをはじめて見たとき、躍動感がありしかも水が流れるような軽い動きで 「まるで歌舞伎役者のようだ」と思ったものでした。太気拳の動きには意味や意志、また技術などを超越した何かがあって、 そういう意味では武道や武術というよりは日本舞踊や歌舞伎、ダンスのそれであり限りなく〝芸〟に近いと感じています。 〝芸〟であるからいつまでも若い人には負けることはないでしょう。

高木康嗣:太気拳・意拳研究会至誠塾塾長
ホームページ http://www.taikiken-shiseijuku.com

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